変体仮名にふりがなをつけて

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変体仮名看板」は、ぜひ作りたいものだと以前からずっと希望していながら、哀しいかなその機会が全くなく今に至っている状態です。

「変体仮名」をWikipediaから引用します。

変体仮名(へんたいがな)は、平仮名の字体のうち、1900年(明治33年)の小学校令施行規則改正以降の学校教育で用いられていないものの総称である。平仮名の字体の統一が進んだ結果、現在の日本では変体仮名はあまり使用されなくなったが、看板や書道、地名、人名など限定的な場面では使われている。異体仮名(いたいがな)とも呼ばれる。また、ケンペルの日本誌では、大和仮名(やまとがな)とも表記されている。
変体仮名に対し、現在使われている字体を「現用字体」と呼ぶ。また、変体仮名の使い分け(現用字体を含む)のことも「変体仮名」と呼ぶことがある。

「変体仮名」はこんな文字です。

漢字をくずした字みたいに見えて、そして実際そうなのですが、これは「仮名」です。
でも多くの日本人はこれを読めません。学校で習わない、というのが最大の理由ではないかと私は思っています。
せめて看板文字によく出てくるような出現頻度の高い文字は学校で教えてもいいのではないかと思いますが、重要度はやはり低いので無理なのでしょうね。
漢字以上に読むのが難しいので、これは学習しないとちょっと読めません。
使用されるのは、和食や和菓子など和風の店舗の看板やそこで売られているものが多いようです。
和菓子のパッケージに変体仮名。いいじゃないですか。
ただ、日本語で書かれているのにそれを読めない人が多い。せっかく古いイメージを出そうとしたのだけれどそれを手にした人の多くがすぐに読めない。
これはやはり困るわけです。
ですのでそのパッケージや看板に書かれた「変体仮名」にさらにひらがなでかなをふる、ということをしたりするのです。
このことについて否定的な意見があるのを私は承知しています。
「屋上屋を架す」という比喩はぴったりだとも思います。
「変体仮名」はカッコイイので使いたい(使い続けたい)→でも読んでもらえない。→かなをふる。
看板屋の私から見ると、これはごく当然のなりゆきであると思えます。
平成30年の現在、「変体仮名」をスラスラ読める人は少ない。「変体仮名」は「仮名」であるとは言え、漢字以上に読むのが困難である。だからかなをふる。
ふりがなの本来の目的は、読めない文字を読めるようにするというものです。
そして読める人の方が少ないであろう「変体仮名」にかなをふるという行為はごく自然なことであると感じます。
「そんな『変体仮名』など使わずに誰にもでも読める字で書いたらどうですか」という意見も中にはあるでしょう。
それでも古くから使用されている自店のロゴや書体をそういう理由で新しいものに変えてしまうのは少し寂しい気がします。
また、「これからロゴを作るのだけれど変体仮名ってイイかも」と考える人がいるかも知れません。
ならば「ふりがなをふってそれで読んでもらえるのですからそれでいいではないですか」と「変体仮名にふりがな」を勧める看板屋がいてもいいでしょう。
今のところ注文はゼロなのですが。。。

最後にここで一番書きたかったことを。
「変体仮名看板」を製作するのが、「なほこ」という名のお店のだったとします。
それぞれ「奈」「保」「古」を字母とする「変体仮名」で書いたとしましょう(この場合「こ」に「古」が字母の「変体仮名」を使用することはあまりないはずなのですが、ここでは度外視します)。横書きにするとこんな感じになります。

なほこ1

なほこ1

「なほこ」は気に入ってるのだけれど何と書いてあるかお客さんがわからないかも知れないので、念のために「仮名」をふって欲しいという依頼があればこう書きます。

なほこ2

なほこ2

「なほこ」が書いたとおりに《ナホコ》と読まれるべきお店の名であるのならこれでよいのだと思います。「変体仮名」で書かれた看板だけれど、ふりがながあるので日本語を読める誰にでも分かる。
問題はここから先です。
「なほこ」が書いてあるとおりに《ナホコ》というお店ならローマ字でこんな説明は不要でしょう。
なほこ3

なほこ3

でももし「なほこ」が《ナホコ》ではなく《ナオコ》と読まれるべき店だとしたら。

なほこ4

なほこ4

ここまで書くとものすごくくどい説明になってしまい、看板としては出来上がりがよくないものとされるかも知れません。
親切が過ぎて、「屋上屋を架す」をダブルでやっています。
でも「変体仮名」で書いてあり、ふりがながあり、おまけに読み方の説明までしている。
必要な説明は是非したほうがいいと思うのですが、こうまでして「変体仮名」にこだわる必要もないかなとも感じます。