「テレビ番組に出た時のこと」10年前のブログから

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から続いたブログの早くも最終回です。
他にも何点か父の書いた原稿があったのですが、公開するのにやや問題のありそうなネタが多くて断念しました。
中にはとても面白い話もあるので、そのうちに再度書き直してもらおうかと思っています。

「テレビ番組に出た時のこと」

平成19年10月31日(水)、関西テレビ「ありがとう」の番組集録が当店と得意先のふたば整骨院で行われました。吉本興業所属のノンスタイル(NON STYLE)井上裕介君のお仕事体験潜入レポート「看板職人のお仕事」と云うことで、私が看板文字を教えることになったのです。
井上裕介君は習字習得六年間の実践があり、看板文字なんか頭から呑んでかかっていた様でしたが、実際は中々習字の様には行かず、悪戦苦闘する結果となりました。

書道では和紙を対象として書くので、硯汁、墨汁何れも和紙に適した半透明液なので、二度書きは許されません。筆力・筆のハネ具合、美観に書き順と厳しく要求されます。
看板文字は、あくまでも商業美観と広告表示である為、その対象物も、鉄・コンクリート、木製品、紙、テント、ガラスと多岐に亘ります。使用する塗料も、対象物によって、油性、水性、揮発性と分かれ、その濃度は墨汁に比べて遙かに濃い不透明塗料が主となるので、書道とは正反対に書き順も違うし、同じ場所を二度三度と重ね書きするのが普通です。
例えば、書道では文字のカスレは当然とされますが、看板文字では、髭文字等以外ではカスレは忌み嫌われます。それはあくまでも美観広告であり、屋外広告の耐候性が問われる故であります。

三十年程前、梅田で書道塾を開く先生からの注文で、先生の書いた原稿を看板に写し書きして納品しましたが、看板文字の価値としては残念ながら高い評価が得られるものではなかったように記憶しております。

屋外で手書き看板書きをしていると、書道は何年何十年とやっておられるのかとの質問をよく受けますが、先の通り、看板文字はあくまでも絵文字であり、書道とは一切関係が無い。友人で素晴らしい楷書看板を書く人が居りましたが、習字や硬筆で書くと小学生にも劣る書き方しか出来ず、これなどは何よりの証拠でありましょう。

平成19年10月31日(水)当日、残暑が特に厳しい中、西日を背に受けて、井上裕介君は「ふたば整骨院」のシャッターに手書き文字を書く事に挑戦しました。整骨院院長の要望で「初めての方は保険証をお持ち下さい」と十六字の内、四文字を書くのに三時間余りを費やしました。

狭い道路(歩道)上、関西テレビのカメラマン、ディレクター、記者等で、又見物人が大勢居る中で、井上裕介君はさすが舞台馴れしているのか手も震えず、堂々と書いており、さすがであると感じました。
井上くんは、何とか凹凸の多いシャッターに書き終えると、腕がしびれて地面にひっくり返っていました。陽は落ちて来て夕方五時には収録が完了しました。

(2008年8月6日・9月28日公開)

父は何度かTVに出させてもらっていますが、井上裕介さんが来て下さったのが最初でした。
井上さんを歓迎する為の看板を作って店の前に立てておき収録の時を迎えたところ、それを見た井上さんはたいそう喜んでくださいました。そして井上さんが「ぜひこの看板をください」とおっしゃるので後日ご自宅までお届けしたのを覚えております。

(『ありがとう』撮影スタッフとNON STYLE 井上裕介さんを歓迎する看板)