かしめ屋(リベット)

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父(前代表)が10年前に書いていた原稿をそのまま投稿します。
看板とは直接関係がない話ですが、今はない現場仕事の話で、もしかするとあまり知られていない事柄なのかも知れません。


「かしめ屋(リベット)」

戦後電気溶接の発達で、かしめ屋と云う職業は現在姿を消しました。
昭和三十年代では、鉄骨の組立、完成はすべてこのかしめ屋の仕事で、どの様な仕事かと云うと、鉄骨の本柱・間柱・クレーンガーター等を現地で組み合わて、工場の骨組を接合するのに用いる接合の役目、にリベットを打込む仕事。
明治・大正・昭和と鉄に関する艦船・戦車等はすべて電気接合が普及するまでの要の仕事。
鉄骨現場でこのリベット(かしめ屋)は大体五〜六人が一組となり、その長(親方)を棒心と言う・
鍛冶屋がボルトで仮止めした所を、リベット打ちで完成させる手順は、例えばクレーンガーター等は大体五.五米で、その片側に鉄板を当てて、その穴にリベットを打つ。リベットの長さは七、八センチから十センチ位。
先ず棒心(親方)が鉄凾でコークスを炊いて加熱したリベットを、クレーンガーターの継目にいる三、四人の中の一人に赤くなったリベットを鉄バサミで掴み十〜十五米の上に投げる。
受取る若者は組の三番手、鋲打ちは二番手、リベット打ちの相番は四番手、五番は足場係。
受取る金具は直径十二、三センチ長さ約三百(ミリ)位、手柄がつき、先は締る、即ちトンガリ帽子の様。
合図に依って、棒心は二、三百度に焼けたリベットを鉄バサミで掴み、十五米上の三番手に投げる。
大体棒心は掴みやすい様に、腹から少し上の方に投げる。狭い足場の上の事で、投げ損ねると焼けたリベットの事で危険きはまりない。
直径十二、三センチ位の口径に焼けたリベットを収納するのは相当の熟練が必要と思う。
昼間の休憩時間にリベット屋に冷たい生のリベットを練習の為借りて、五、六米の距離でやってみたが鉄の塊が飛んでくる様で、とてもとても受取る事は怖くて出来なかった。
本番作業中、三番手が一度は収納しても、下に落とす事もあり、又受取る範囲内(ストライク)で落す事があると、棒心より大声で怒られる場面は日に何度もあった様に思う。

ある日の事、リベット屋が来なくなり、知合いの鍛冶屋が自分達でかしめをやるから、ペンキの下げ缶を貸してくれと云うので、どうするのかと思うと、下で焼いたリベットを、下げ缶に入れてロープで引っ張り上げて、鋲打ちをするのだが、そのわずかな時間差でうまく鋲打ちが出来ず、やはり鍛冶屋は鍛冶屋、リベット屋はリベット屋とつくづく思った。(後略)

(2008年頃森田三郎記述)


ここには書いていませんが、父から同じ話を何度か聞いた際、「上で受取る者はメガホンのような形状のもので受け取っていた」と聞いています。
想像するだけで怖いですね。