ドラマのセットに関する記事です。
これまで朝ドラ『ちむどんどん』の建物セットの使い回しについて数回書いてきました。
特に横浜・鶴見の「あまゆ」に代表される建物の使い回しは見事で、実に気づきにくく、そして美術スタッフがここまでしなければいけないのは、セットのスペースに関する制約がきっと大きいのだろうなと考えておりました。勿論それは、時間や予算と不可分の問題ではあるのですが。
「基本的にセットは使い回しをするのだろう」という目で過去の放送回を観てみると、それまでに気づかなかった使い回しを発見することもあり、とても興味深いわけです。
今回書くのは、「チュラソーダ」の製造販売元である「眞境名商事」のセットについてです。まず引用させていただく画像は、第15回のもの。ヒロイン暢子(黒島結菜さん)が母・優子(仲間由紀恵さん)と、謝罪に訪れた場面です。
窓の外に、隣の建物の屋根が見えます。
このタイプの屋根瓦で、かつ隣りどうしに建物があるとすると、これは「比嘉家」と「山原村共同売店」のいずれかではないかと思うのが妥当でしょう。
(↑)この記事で、
- とうふ砂川
- 山原村共同売店
- 嘉手苅金物店
- サンセットバーガー
- 喫茶 サーカス
が、同一の建物セットを使用していて、これらは「比嘉家」の隣りにあることを確認しております(喫茶サーカスについては、セットの設置場所が違うかもですが)。
「眞境名商事」の事務所の様子が映った第12回の静止画像です。「比嘉家」か「共同売店」か、いずれを改造したものなのかは、これら画像から判断するのは困難です。
「眞境名商事」と激似の建物セットがありました。暢子らが通う「山原小学校」「山原中学校」の校舎です(第1回から)。隣りの屋根が映っていて、別の校舎ということかも知れません。
いずれもスタジオのセットで、これほど似た建物が複数あるというのは考えづらいところ。異なる箇所はたくさんありますが、改造したのだとすれば納得出来ます。
校舎の屋根が映っていました(第7回から)。
この校舎と「比嘉邸」とでは、屋根が大きく異なるので同じ建物とは言えないはずです。
(↓)比嘉邸が映った第13回から。校舎とは、屋根の形状も使用している瓦も違います。
公式サイト#ちむどんインタビュー【「比嘉家」のセットに込められたこだわりを一挙に紹介!】にあった図面を引用させていただきます。
図面からは、「比嘉家」と「砂川とうふ店」(=山原村共同売店)が隣りどうしになっている様子が見て取れます。
「山原村共同売店」から見た向かいの建物です(第7回から)。ハッキリ見えない工夫がされていますが、これこそが「山原小学校/中学校」の校舎。改造前の比嘉邸です。
ドラマ初期の頃は、「眞境名商事」と「山原小学校/中学校」の場面があったので、これらセットの分を撮影した後、比嘉邸に大改造したということなのだと想像するのです。
では、本当に「比嘉邸」=「眞境名商事」=「山原小学校/中学校」なのか。
おそらく「眞境名商事」=「山原小学校/中学校」については異論がないことだと思います。
「山原小学校/中学校」の職員室が映っている第23回の静止画像です。廊下にご注目ください。
特に廊下の突き当り部分。
ここが、比嘉家の風呂小屋と極めて似ているのです(画像は第21回から)。
風呂に隠れていたのは賢秀(竜星涼さん)でした。。
職員室の廊下の画像から、風呂小屋に相当する部分を切り取ります。
電灯も同じように見えますし、改造前後と判断してよいでしょう。職員室の外の廊下が先です。
風呂小屋は、タイトルバックのアニメーションにも写っていました。第1回から。
フォント(モリサワ UDデジタル教科書体NP-R)について書いた記事でも引用させていただいた、黒島結菜さんのお名前が記された画像で背景にあるのが風呂小屋でした。
これで、
「眞境名商事」=「山原小学校/中学校」=「比嘉邸」
がお分かりいただけたと思います。
撮影の順番としては、
- 眞境名商事
- 山原小学校/中学校
- 比嘉邸
なのかな、と予想します。
「1と2は逆」は、大いにありえますが。
小学校の校舎内での場面は、直近では第63回でもあったのですが、この分は比嘉邸へ大改造する前に撮影していたのだと考えれば不都合はありません。
また、上のシーンの直前には、廊下の(突き当たりの)様子がよく分かる映像がありました(63回)。
先に引用した「眞境名商事」の廊下と対比させると、「あ、同じだ」となるはずです(第12回)。
「眞境名商事」は「チュラソーダ」を生み出しただけでなく、その建物は「山原小学校」「山原中学校」の校舎でもあり、そして物語にとって非常に重要な建物である比嘉邸でもあったのでした。
比嘉邸になる前に、もしかすると他の建物として使われたのかも知れないので、もしあれば追記します。