豆腐店「とうふ砂川」(朝ドラ『ちむどんどん』)

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ドラマのセットに関する記事です。マニア向け。

朝ドラ『ちむどんどん』第12回から。1971年の沖縄・山原村です。病気の母親に代わって豆腐店「とうふ砂川」を切り盛りしている智(前田公輝さん)。手前は歌子(上白石萌歌さん)です。外にある石垣にご注目ください。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
石垣の部分を切り取りました。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
なんとなく『ちむどんどん』では見たことがあるような光景です。

山原村共同売店の隣りに、とても似た石垣がありました(第6回から)。
朝ドラ『ちむどんどん』第6回から
こちらも石垣の部分を切り取ります。
朝ドラ『ちむどんどん』第6回から
上の2段に積まれたブロックの見え方と、石が積まれた箇所の高さとの比率がとてもよく似ているのです。壁や窓の様子も。

「とうふ砂川」の画像をもう一度。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
映っている箇所は異なるものの、同じ石垣だろうと思われます。

「とうふ砂川」の入口の画像です(第12回から)。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
手前から歩いて行って、右に折れた先に「山原村共同売店」があるのだろうと。つまり、「とうふ砂川」と「山原村共同売店」は共通の建物を使っていると考えられるわけです。

「共同売店」の画像を再掲します。朝ドラ『ちむどんどん』第6回から
この画像では分かりづらいのですが、ポストの先を左へぐるっと回ると「とうふ砂川」へ行けたはずなのです。

でも、「山原村共同売店」が普通に営業している時(変な表現ですが)には、「とうふ砂川」は存在しえないので、行こうと思っても行けないわけです(画像は第11回)。石垣の手前まで全部が「共同売店」なので。朝ドラ『ちむどんどん』第11回から

そして、「とうふ砂川」は、その後「嘉手苅金物店」に変身していました(順番は逆かも知れませんが)。画像は第72回から。
朝ドラ『ちむどんどん』第72回から
手前に見えているブロックと籐椅子が目印です。

第6回の「とうふ砂川」画像を再々掲。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
不鮮明ながら、同じ籐椅子に見えます。間違いないでしょう。

「嘉手苅金物店」の別画像(72回から)。
朝ドラ『ちむどんどん』第72回から
7~8段の高さに積まれた左側のブロックも共通です。
「とうふ砂川」の入口画像を再掲(第12回)。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
つまり、「嘉手苅金物店」は「山原村共同売店」の奥の方を使って営業していたのでした。

建物セットの使い回しは、他にもありました。「嘉手苅金物店」の屋根にある瓦「隅鬼」がヒントです。
朝ドラ『ちむどんどん』第72回から
切り取りました。
朝ドラ『ちむどんどん』第72回から
上は〇の中に「Y」があるようです。下の先の方は「★」マーク。

名護にあった「サンセットバーガー」の屋根と同一と思われます(第32回)。
朝ドラ『ちむどんどん』第33回から
第17回の画像。向かいにあのブロックが見えます。
朝ドラ『ちむどんどん』第17回から
「隅鬼」は同じ場所のではなく、反対側のだったのでしょう。

「サンセットバーガー」の中の様子。天井の形と仕上げが特徴的です(第12回)。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
最初に引用した「とうふ砂川」の画像。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
梁のあるなしで異なる部分もありますが、とてもよく似ています。

こうなると、

  • とうふ砂川
  • 山原村共同売店
  • 嘉手苅金物店
  • サンセットバーガー

が共通の建物セットを使っていることになってしまいます。

瓦や「隅鬼」については、「山原村共同売店」の屋根にあるのも同じなので、まず間違いないと思うのですが。朝ドラ『ちむどんどん』第11回から

でも本当にそうなのか、実は自信がありません。
「どうやって撮影しているの?」という疑問がついて回るというのが大きな理由です。

撮影のたびにセットを総入れ替えするというのは現実的ではないように思います。
たとえば「共同売店」を除くと、「サンセットバーガー」が比較的長く映っていたなという印象で、店舗としての「とうふ砂川」と「嘉手苅金物店」はごくわずかな場面だけだったので、「共同売店」以外の3軒分を先にまとめて撮った、あるいは「とうふ砂川」「サンセットバーガー」を先に作って撮影した後に「共同売店」にして、奥の一部を一時的に「嘉手苅金物店」に改造した、とかかなと想像するのですが、本当にそういったことが出来るのかどうか。

いずれにしても美術スタッフの方のご苦労がしのばれます。

「あまゆ」の建物の使い回しはこちら(↓)。

ドラマのセットに関するマニア向けの記事です。 朝ドラ『ちむどんどん』第32回から。横浜・鶴見ハイサイ通りにある沖縄料理店「あまゆ」から出て...

公式サイト#ちむどんインタビューの、【「比嘉家」のセットに込められたこだわりを一挙に紹介!】で「とうふ砂川」の建物が記載された図面が公開されていました。引用させていただきます。

朝ドラ『ちむどんどん』第回から

小さくて字はほとんど読めないのですが、「比嘉家」と「砂川とうふ店」が隣りどうしになっている様子が見て取れます。
そうすると、「とうふ砂川」は「山原村共同売店」と同じ建物なので、「比嘉家」と「山原村共同売店」は隣りどうしだ、ということに当然なるわけです。

そう言えば、「共同売店」の向かいには民家らしき建物があり、「これはいったい何なんだろう」と、以前から疑問に思っていました。「もしかすると比嘉家?」とも。
図面のとおりに配置されているのであれば、向かいの民家は比嘉家以外にありません。
朝ドラ『ちむどんどん』第7回から
ただ、「共同売店」から見えている隣家の屋根は、第7回で映っていた比嘉家の屋根と随分異なるので、この点はどうなんだろうという疑問が残ってしまいます(『ちむどんどん』第7回から)。

比嘉家の画像は第6回から。賢三(大森南朋さん)が亡くなる場面です(ごめんなさい)。
朝ドラ『ちむどんどん』第6回からもしかするとカモフラージュして(?)他の家に見えるように、一般的な屋根瓦を持ってきたのかも知れません。

ただ、「とうふ砂川」の中から見えていた隣家の屋根は比嘉家のそれと思われます(第12回)。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
また、同じ画像の引用で恐縮ですが、隣家の屋根の見えている部分は特徴的ではないでしょうか。隅棟が2つ見えます(第12回の静止画像)。
朝ドラ『ちむどんどん』第12回から
比較するのに適した画像が第13回で得られました。朝ドラ『ちむどんどん』第13回から
「とうふ砂川」の入口付近から見えるのは比嘉家の屋根だと考えるべきでしょう。

他方、比嘉家から見た隣家の様子です。第15回の静止画像。
朝ドラ『ちむどんどん』第15回から
お隣りは「山原村共同売店」のはずなのですが、屋根の下は見えないように材木かなにかで覆われています。

もう1枚、第17回から。女性は歌子(上白石萌歌さん)に会うべく比嘉家へやって来た高校の音楽教師・下地響子(片桐はいりさん)。
朝ドラ『ちむどんどん』第17回から
やはり目隠しのように木で覆われています。「共同売店」であるのが分かると、よくないのでしょう。

以上をまとめると、

  • とうふ砂川
  • 山原村共同売店
  • 嘉手苅金物店
  • サンセットバーガー

は同じ(屋根の)セットを使用していて、そして「それらの隣りは比嘉家である」ということになるのでした。

建物の使い回しはともかく、「比嘉家と共同売店が隣りどうしなのは薄々気づいていた」という方もいらっしゃるのだと思います。私もなんとなく「隣りなのかな」と思っておりましたが、これら建物の使い回しは全く気づきませんでした。

(2022年8月7日追記)


「サンセットバーガー」の内部に極めてよく似た喫茶店が出現していましたが、今日まで気づきませんでした。画像は第86回から。喫茶「サーカス」ですね。
朝ドラ『ちむどんどん』第86回から

一方、「サンセットバーガー」の画像は第21回から。詐欺に遭った賢秀(竜星涼さん)が自棄になって暴れて店の調度等を壊してしまったのを、優子と暢子が謝罪の為に訪れた場面。
朝ドラ『ちむどんどん』第21回から
左側の天井の様子と、柱がとても似ています。「サンセットバーガー」と大きく異なるのはスピーカーを置いているロフトが設けられている点。窓やドアも全く違っていますが、同じ建物であるとしても不都合がないはずです。

「サーカス」で重子(鈴木保奈美さん)と和彦(宮沢氷魚さん)が座っているのは、カウンターとは反対の一番奥の席です(画像は第83回から)。
朝ドラ『ちむどんどん』第83回から
「共同売店」でこのあたりが映っている静止画像です(第64回)。朝ドラ『ちむどんどん』第64回から

「両者は同じセットだと思え」というのも乱暴な話だろうと思うのですが、改造すればここまで変わるんだという見本のようなものではないでしょうか。

和彦が入ってきたドアの外はこうなっています(第83回)。門柱にご注目を。
朝ドラ『ちむどんどん』第78回から

激似の門柱は「共同売店」の入口付近にもあります。
朝ドラ『ちむどんどん』第11回から

「サーカス」のドアから門柱までの距離と、「共同売店」の入口から向かいの家の門柱までの距離とは、おそらくほぼ同じで、門柱は移動することなくこの位置にずっとあるように思います。

喫茶「サーカス」を追加した一覧を。

  • とうふ砂川
  • 山原村共同売店
  • 嘉手苅金物店
  • サンセットバーガー
  • 喫茶 サーカス

5軒の使い回しは実にすばらしいと思います。
「これ以上はもうないだろう」と考えるものの、「でもまだあるかも」と期待しています。

(2022年8月8日追記)