「五歳の男の子を探しています」貼り紙(大阪制作の朝ドラ)

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ドラマの小道具として使用された貼り紙に関する非常にマニア向けの記事です。

朝ドラ『おちょやん』第39回から。「カフェーキネマ」から出て来た小暮(若葉竜也さん)です。塀の貼り紙にご注目ください。朝ドラ『おちょやん』第39回から

「尋ね人」と書かれたこの貼り紙です。
朝ドラ『おちょやん』第39回から「尋ね人」

この貼り紙を、過去に大阪放送局で制作された3つの朝ドラで確認しておりました。

まず『べっぴんさん』(第15回から)。戦後の闇市ですね。
朝ドラ『べっぴんさん』第15回から
朝ドラ『べっぴんさん』第15回から
貼り紙には、
「尋ね人
五歳の男の子を探して
います。心當りの方は
下記まで 二丁目 水田」
と書かれています。

『おちょやん』で使用された貼り紙と比較してみると、左上の欠けている部分の形も同じで、同じ一枚の貼り紙であるとしか思えません。

『まんぷく』でも使用されていました(↓下2枚、第45回から)。こちらも戦後の闇市の中なのでした。
朝ドラ『まんぷく』第45回から
朝ドラ『まんぷく』第45回から

切り取ります。
朝ドラ『まんぷく』第45回から
左上の欠けている部分が同じです。『べっぴんさん』の時と比べると、文字が少し薄くなっているように思えます。

また、前回の大阪制作の朝ドラである『スカーレット』でも使われていました。こちらもやはり闇市です(第2回から)。
朝ドラ『スカーレット』第2回から

左の塀(?)一面に貼られた貼り紙の中で、右上の方にあります。
朝ドラ『スカーレット』第2回から
これまた部分的なのですが、「二丁目 水田」とあるので同じ貼り紙と見て間違いないでしょう。「欠け」もしっかりあります。

『おちょやん』第40回で、千代が「カフェーキネマ」の従業員らと別れる場面にも映っていました。
朝ドラ『おちょやん』第40回から

切り取って補正しました。
朝ドラ『おちょやん』第40回から
非常に穿った見方なのですが、「尋ね人/五歳の男の子を探しています。心當りの方は下記まで」の「男の子」というのは、千代が普段気にかけている、生き別れになったままの弟・ヨシヲのことなのかも。勿論、「二丁目 水田」さんが書いた貼り紙なのは分かっているのですけれど、このような内容の貼り紙をあえて目立つような場所に貼ったのにはそういった意図が多少なりともあったのではないかと。

『べっぴんさん』よりも古い大阪制作の朝ドラに使われていなかったか、また『わろてんか』のどこかで使われていなかったか、引き続き調べておくことにします。


『わろてんか』の第150回でこの貼り紙がありました。やはり闇市の中です。
朝ドラ『わろてんか』第150回から

ピントがあっていなくて上半分くらいしか見えていないものの、「尋」の字がかろうじて読み取れます。決め手はやはり左上の欠けている部分。
朝ドラ『おちょやん』第150回から

ということは、『べっぴんさん』、『わろてんか』、『まんぷく』、『スカーレット』、そして『おちょやん』と、少なくとも大阪放送局で制作される5つの朝ドラで連続して使用されたということになります。また、『おちょやん』ではそれ以前の4作品とは異なり、戦後の闇市以外で使われた。これってすごいことなのではないでしょうか。喜ぶのはマニアの方だけかも、なのですが(笑)。
(2021年2月6日追記)


『まんぷく』では、上記第45回とは別の場所にもありました(第26回から)。同様に闇市の中です。
朝ドラ『まんぷく』第26回から
朝ドラ『まんぷく』第26回から
(2021年2月8日追記)


現在放送中の『カムカムエヴリバディ』では、大阪の闇市の壁に貼られていました(第22回から)。
朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第22回から
ものすごく不鮮明な画像で恐縮です。
朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第22回から
右に大きく書かれた「尋ね人」と、左上の「欠け」が決め手です。同一の張り紙と判断してよいでしょう。

ところで、東京制作の朝ドラ『とと姉ちゃん』(2016年度上半期)で、この張り紙と関係ありそうな苗字の登場人物がいたのをご存じでしょうか。

小橋家の次女・鞠子(演:相楽樹さん)と結婚したのが水田正平(伊藤淳史さん)で、ふたりの間に生まれた長男が潤という名で、役の中で5歳の時の映像がテロップ(水田潤 5歳)入りでありました(朝ドラ『とと姉ちゃん』第145回から。次女のたまきは、『おかえりモネ』でヒロインの妹・未知を演じていた蒔田彩珠さんですね)。
朝ドラ『とと姉ちゃん』第145回から

ストーリーの中では、潤がどこかに行って行方が分からないとかの場面はなかったはずですが、「5歳の男の子」「水田」が合致しているので、仮にこの張り紙の初出が『べっぴんさん』だとしたら、その直前に東京で制作されていた『とと姉ちゃん』から子どもの名前と年齢をもらって作った、というのはないでしょうか。
非常の穿った見方なのですが、「そうや、絶対そうや」と言う人も中にはいるかも。私は半半くらいかなと思っていますが、でも本当にそうなら面白いよなあ、と考えております。

(2021年12月25日追記)