朝ドラのセットで使用された看板に関する記事です。少しマニア向けの部分があります。
『エール』第30回から。ヒロイン・音(演:二階堂ふみさん)が姉と身を寄せる東京の親類宅の前です。
看板部分を切り取ります。
「品質保証/世界の品質をあなたの腕に」と書かれています。
「この看板は確か『ひよっこ』にあったはずだ」と、保存していた画像を探しまくったのですが全然見つかりません。ようやく「これだ!」と見つけたのはちょっと様子が違う看板の画像でした(『ひよっこ』第32回から)。
向島電機にほど近い駄菓子屋さんで、銭湯からの帰りに寄ったという設定です。
ヒロイン・みね子(演:有村架純さん)の後ろに見えるこの看板を覚えていたのでした。
「白洋時計店」と周囲の青いラインの部分をまさに切り取ると『エール』で使用された看板が現れるのです。「白洋時計店」の画像を補正します。
もう一度『エール』で使用された看板をご覧いただきます。
比較するとそれぞれの文字と配置がソックリです。使い回しと考えてよさそうです。
それにしてもこの看板は実に不思議な看板です。
商品名や社名などもなく、「品質保証」「世界の品質をあなたの腕に」とだけ書かれているのです。
でも違和感がない。
景色に溶け込んでいる。
看板が自己主張しない。
朝ドラに限らず、ドラマで使用される脇役の看板というのはそういう使われ方をするのが一番なのでしょう。
『ひよっこ』の前に『とと姉ちゃん』で先に使われていました(第105回から)。右下にあります。
試しに「品質保証」をDF極太楷書、「世界の品質をあなたの腕に」を白舟隷書教漢(フリー)で書いてみました。
「品質保証」は「随分似ているな」くらいですが、白舟隷書教漢で書いた「世界の品質をあなたの腕に」は、特徴のある「世」と「質」の字を比較してみるとソックリなので、「これは間違いないだろう」という感じです(白舟隷書教漢には「腕」の字が入っていないので、そこは空欄になっています)。
よく見ると存在理由が不明の不思議な看板ですが、「これはもしかすると美術担当からこのドラマへのメッセージなのではないのか」と実に穿った見方なのですが、そう感じました。実際のところは違っていたりするのでしょうけれども、そう思うファンもいたりするのです。
一方、『エール』第30回で主人公・裕一(演:窪田正孝さん)がここへ辿り着くまでにも、塀に看板が設置されている場所がありました。音のいる家からそんなに離れていないような印象です。
右の看板には「時計はヤマト」と書いてあり、左の看板には「各種時計の修理承ります」とあります。左の看板もおそらく「ヤマト」の看板なのでしょう。
左の「各種時計の修理承ります」の看板は、こちらも『ひよっこ』で見たことがありました(ひよっこ』第36回から)。
赤坂の「あかね坂商店街」内のある時計屋さんです。看板は部分的にしか見えていませんが、これらが同じ看板であることは、板の形状と色、文字色や書いている内容、使用している書体や配置等から容易に想像出来ます。
この時計屋さんは、商店街の案内図によると「ヤマト時計」です(同上)。
残念ながらこれと同じ「時計はヤマト」の看板を、『ひよっこ』を含めて他の朝ドラで見つけられずにおります。
この「ヤマト時計」は、店舗の2階部分が『ひよっこ』第3回で映っていました。
右の建物です。実はこの建物、東京で制作される朝ドラで極めて多く使い回しされている建物なのです。マニア向けなので興味のある方だけどうぞ(↓)。
しかしこうなって来ると、最初の「品質保証」看板も実は「ヤマト時計」の看板だったんじゃないのかな、という疑問が湧いてきたりするわけです。
でも実際のところは答えがないので、「そうなんじゃないのかなあ」「だったらいいなあ」くらいに考えて、楽しく朝ドラを視聴しております。
『ひよっこ』第24回で、また別の「白洋時計店」看板がありました。場所はヒロイン・みね子(演:有村架純さん)らが集団就職でやって来た東京・上野駅です。
右にある「各種時計の修理承ります」の看板のみが、『ひよっこ』で赤坂の「あかね坂商店街」内にある「ヤマト時計」で使われ、またその後『エール』でも使用されたということなのでしょう。ちょっとややこしいですね。
『エール』第45回のおしまいで、「時計はヤマト」の看板がごく小さく映っていました。
この画像だけで「同じ看板です」と判断しているのではありません。
これだけ小さくても、下の「時計はヤマト」看板と比較すると同じものにしか見えないのです。
この現象も実に不思議なのですが、例えば知り合いの顔であれば、かなり不鮮明な写真であっても高精度で当てることが出来る、というような事と似ているのではないのかと。
この看板の場合、不鮮明さがさらにアップしても見分けられそうな気がします(笑)。