ドラマの小道具に関する短い記事です。マニア向け。
朝ドラ『風のハルカ』(2005年度前期)第49回から。ヒロインハルカの妹・アスカです。棚にある本の中から、上段中央あたりにある3冊に注目します。
切り取り画像。
左から、
「(ム)ッソリーニを逮捕せよ 木村裕主」
「神々の見えざる手 山路道真」
「(宇)宙から来た孫 道頓堀川散歩」
と記されています。
左の「ムッソリーニを逮捕せよ 木村裕主」は実在する書籍で、講談社1989年刊。1990年に第12回講談社ノンフィクション賞を受賞しています。
右の「宇宙から来た孫」は、朝ドラ『てるてる家族』(2003年度後期)で佐藤通夫(大村崑さん)が自費出版したSF小説です。道頓堀川散歩はペンネーム。
そして中央の「神々の見えざる手 山路道真」。
この本はドラマで使われる為に制作されたもので、「神々の見えざる手」「山路道真」の両方が実在しません。
他の朝ドラではよく使われるように思います。
朝ドラ『わかば』(2004)では、ヒロイン若葉(原田夏希さん)の弟・光(崎本大海さん)の部屋にありました。お二人の間に見えています。
切り取って補正した画像です。暗くて申し訳ありません。「神々の見えざる手」真ん中に。
見えづらいのですが、黒い帯があり、著者名は白い文字なのが分かります。読めませんが。
1冊挟んだ右隣りに「赤犬村」があります。こちらはBKドラマで使い回しされる本としては最も有名かも知れません。
「神々の見えざる手」は、『舞いあがれ!』(2022)では古書店「デラシネ」に置かれていました。平置きされた「模型紙飛行機の工作」の向こうです。
切り取り画像。
「実在しない書籍を制作し、それを使い回しする」というのは、AK制作の朝ドラではあまりないように思います。
BKだけなのかどうか、確実なことは言えませんが、少なくとも10冊以上の本が使い回しされているのを確認しております。その中には『てるてる家族』の「宇宙から来た孫」のように劇中で名前が使われたものや、「神々の見えざる手」のように美術スタッフが中心となって制作されたであろうものがあり、実に興味深いです。
朝ドラのセットで本棚に入っている本は、大きく分類すると
- 市販本(ムッソリーニを逮捕せよ 等)
- 劇中で使われたことのある本(宇宙から来た孫 等・流通なし)
- 架空の本(神々の見えざる手・赤犬村 等)
となりますが、朝ドラの関連本として出版された本(オードリー1 とか)が他の朝ドラで使われることもあったりするので、それを「市販本」として全く同じように考えてよいのか迷うところではあります。
そして、「実在する本に登場する作家の本」というジャンルもあったりするので、分類は簡単ではありません。でも見つけるのはものすごく楽しいです(最近気づいた『猩猩の街』↓)。