日活映画『若草物語』西淀川ロケ

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地元西淀川区内でロケが行われた映画に関する記事です。

昨日、動画配信サービスで日活映画『若草物語』(1964年)を視聴しておりましたら、見覚えのある風景が映っているのに気づきました。

『若草物語』は次のような映画です(Wikipediaから引用)。

『若草物語』(わかくさものがたり)は、1964年12月31日に公開された日本の映画作品。日活の四大女優(吉永小百合、浅丘ルリ子、芦川いづみ、和泉雅子)が共演した。高度成長期を生きる若い女性たちの恋愛観や結婚観、幸福のかたちを健康的に描いた青春大作。上映時間は85分。

あらすじ
高村家の由紀(浅丘ルリ子)、しずか(吉永小百合)、チエコ(和泉雅子)の三人姉妹は、若い後妻をもらった父・勇造(伊藤雄之助)を気づかって家出を決行。伊丹空港から日航機に乗って、東京で暮らす新婚の長姉・早苗(芦川いづみ)のアパートに押しかける。やがて三人の妹たちは早苗と夫・宏一(内藤武敏)のもとを離れ、三人でアパート暮らしをはじめる。大阪弁で繰り広げられる三姉妹それぞれの恋愛模様が描かれる。

―【Wikipedia『若草物語』から引用】

まず気づいたのが、冒頭あたりのこの場面。次女由紀(左:浅丘ルリ子さん)と同僚女性が会社の屋上で会話をする、由紀の回想シーンです。
映画『若草物語』(1964年)から

右上に見えるこの建物は、野里交差点にある「西淀ビル」(西淀川区花川2-21-13)だと気づきました。
映画『若草物語』(1964年)から

比較的似たアングルから撮影されたGoogleストリートビューを持ってきました。「西淀ビル」は、正面に見える2階部分に「吉野家」の袖看板が取り付けられたビルです。屋上の看板は当時ありません。

比較的大きな野里交差点の一角に50年以上前からあるビルで、屋上に大きな看板があり、目立つ建物です。
今見るとごく普通のビルなのですが、私が子どもの頃は周りに大きな建物がなく、このビルを見るたびに「野里に来たなあ」と感じていたことを思い出します(実際ビルがあるのは野里ではなく花川)。

また、正面奥にある赤い「正」の看板は、「丸正百貨店」という会社のものでした。
映画『若草物語』(1964年)から

2009年に撮影されたストリートビューには映っていました。その後看板は撤去されています。

三面ある丸い「正」看板のうち、映画の画像で見えているのは、ストリートビューで見えている面と、道路からはちょうど「ま裏」にあたる面です。

屋上の場面の続き。左に見えるのは淀川ですね。鉄橋は阪神電車本線のもの。
影の様子から、よく晴れた日に撮影されているのだろうと思われるのですが、空の青さがほとんど感じられません。空気がとても汚れているように見えます。
映画『若草物語』(1964年)から

「西淀ビル」と「丸正百貨店」、そして淀川の位置関係から、この会社は姫里1-2あたりにあったのだろうと思われます。

次女由紀の回想シーンの前は、三女しずかの回想でした。四姉妹の実家。模型店を経営しているのです。「マブチモーター」の看板が確認出来ます。
映画『若草物語』(1964年)から
映画『若草物語』(1964年)から
和服の男性は姉妹たちの父・勇造(演:伊藤雄之助さん)。店内にいるのが三女しずか(演:吉永小百合さん)です。

ここは古い地元民ならすぐに場所が分かるような気がします。野里の住吉神社脇です。

模型店は「マルワ模型店」さんの店舗を借りて撮影していたのですね。
突き当りの建物は撮影時のままのようです。

下の画像左に「(野里)本町商店会」の看板が確認出来ます。
映画『若草物語』(1964年)から

以上、1964年に公開された映画『若草物語』の西淀川区内のロケ地を、Googleストリートビューで訪ねたという記事でした。


追記です。

模型店を映している中で一番上の画像右側に、矢印の付いた「テアトル・リボン」の看板が見えますが、道沿いのすぐそばにこの名前の映画館があったのです。今思うとここからだとおそらく映画館そのものが近くに見えているはずなので、看板の設置場所にちょっと違和感があったりします。
映画『若草物語』(1964年)から
看板に貼られたポスターは、『太陽西から昇る』のもの。やっぱり日活映画でした(笑)。そして写っているのは浅丘ルリ子さん(!)。映画の中でロケ地そばにある映画館の宣伝をしているのかな、と思ったのですが、それだけでなく日活(映画)の宣伝を兼ねていたわけですね。

住宅協会出版部発行の【大阪市全商工住宅案内図帳 西淀川区】(昭和44年)から、野里商店街の部分を引用させていただきます。

住宅協会出版部発行【大阪市全商工住宅案内図帳 西淀川区】(昭和44年)から引用

分かりやすくする為、「マルワ模型店」を緑色の楕円で、「テアトルリボン」を赤色の円で、それぞれ囲みました。
住宅協会出版部発行【大阪市全商工住宅案内図帳 西淀川区】(昭和44年)から引用
また、黄色の楕円で囲ったのは、他に3軒あった野里町内の映画館です。
「テアトルリボン」と隣接する形の「リボン座」、住吉神社の前にあった「野里大映」、そしてやや離れた場所にある「野里東映」。当時4軒の映画館が野里にあったのでした。
私自身、どこかはハッキリしないのですが、この中の1軒でウルトラマンの映画を観た覚えがあります。
当時の野里は、アーケードの商店街もあり、大変賑やかな街でした。

また、その前の四女チエコ(和泉雅子さん)の回想シーン。チエコが働く工場も、おそらくは西淀川区内の工場であろうと思われます。
映画『若草物語』(1964年)から
映画『若草物語』(1964年)から

この工場についてはさっぱり情報がありませんので、ご存知の方がいらっしゃいましたら是非情報をお寄せください。よろしくお願い申し上げます。

(2020年11月24日追記)


由紀(浅丘ルリ子さん)が同僚と会話する屋上のシーンは、「淀川ホテル」あるいは「ふじ島ホテル」という名称の、おそらく2階建てのホテルの屋上で撮影されたものです。1960年の住宅地図では「淀川ホテル」、1969年では「ふじ島ホテル」となっておりました。現存せず、どのようなホテルであったのかは不明です。

屋上での会話を文字にしてみます。

同僚「やっぱしウチの方が先やったね」
由紀「おめでとう」
同僚「由紀も早う結婚しなさい。贅沢ばっかり言うてんと」
由紀「あ。贅沢なんか」
同僚「あれもイヤ、これもイヤや言うてるうちに、女はすぐに年を取ってしまうんやさかい」
由紀「そやね」
同僚「ええ加減のところで見切り付けるのが肝心なんよ」
由紀「おおきに」
同僚「な、経理の河合さん、あんたどう思う?」
由紀「どうも思えへん」
同僚「ウチ、頼まれたんや、由紀のこと」
由紀「いや、ホント?」
同僚「それとなくあんたの気持ち聞いてくれって」
由紀「せっかくやけどウチね、家出することにしたの」
同僚「ええ?」
由紀「こんな汚いとこで鼻の穴真っ黒にして生きていくの飽き飽きしたわ」

(2020年11月28日追記)

コメント

  1. minosun より:

    初めまして。私も「若草物語」を視聴し、ロケ地に興味を持ちました。
    以前に野里に住んでいましたので、投稿を興味深く拝見しました。
    封切から60年近く経つというのに、多くのロケ地が残っていますね。
    さて、スト中の工場ですが、現在の阪神高速技術 大和田事務所(大和田1丁目1−4)辺りではないかと想像します。一瞬だけ映像の手前に映った土手は旧大野川で、工場正門の橋を渡った対岸より撮影されたのではないかと・・・ 

    下記URLは1966年に撮影された空中写真です。
    https://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=410104&isDetail=true

  2. kuroji-kanban より:

    minosun様

    コメントありがとうございます。
    お住まいが野里でいらっしゃったとのこと。親近感がわきます。

    工場のロケ地が大野川沿いではないかとのご意見をいただいたので、早速航空写真を見てまいりました。確かに似た感じの場所で、あのように広い範囲を映すのであれば大野川の対岸くらいからの距離を確保しないと難しいのではないかなと再認識しました。
    ただ、一方向からの部分的な映像しかないので、「阪神高速技術 大和田事務所」の場所にあった工場だと断定するのにはやや決め手に欠けるかなという印象です。俳優さんたちの影の様子に照らしても違和感がなく、とても似ているのですが。

    貴重なご意見をいただき感謝いたします。