「お前が刹那から追い出したものを永遠は返してはくれない」(シラー)

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名言に関する短い話です。

『世界名言大辞典』(明治書院・梶山健 編著)にあるシラー(ヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラー。ドイツの詩人、歴史学者、劇作家、思想家/Johann Christoph Friedrich von Schiller)の名言。

お前が刹那から追い出したものを永遠は返してはくれない。

ー―シラー「諦観」

なかなか耳に痛い言葉です。「お前」や「刹那」がものすごく効いていて、一度読むと忘れられないようなインパクトがあります。「刹那」は「きわめて短い時間」「一瞬」の意。

ドイツ語の原文はこれです。Resignation(『世界名言大辞典』では「諦観」)という詩の最後(↓)。

Was man von der Minute ausgeschlagen, gibt keine Ewigkeit zurück.

ーResignation

日本語訳された文章では「お前が刹那から追い出したものを永遠は返してはくれない」が圧倒的に多くて、他の訳は見つけられませんでした(『永遠は返してはくれない』が『永遠は返してくれないになっている文が一部にあり)。

英訳ではどうなっているのか、興味が湧いたので調べてみました。
見つかったのは下の5例です。

  • Eternity gives nothing back of what one leaves out of the minutes.
  • That which is excluded from the moment, no eternity will restore.
  • What one refuses in a minute No eternity will return.
  • What is left undone one minute is restored by no eternity.
  • What is rejected in the moment, No Eternity gives back.

原文の“Ewigkeit”(永遠)が英訳では“Eternity”になっているのが共通。
これらの中では、最後の「What is rejected in the moment, No Eternity gives back.」が好みです。「返してはくれない」の日本語訳に最も近いかなというのもありますが、“rejected”が特にイイと感じます。

ちなみに、フランス語ではこう訳されている場合が多いようです(↓)。

Ce que l’on refuse à la minute, aucune éternité ne le rend.

フランス語訳では、なぜかシラーの名言としてではなくヘラクレイトスのそれだとしているサイトが複数あります。

シラーの“Resignation”に収録されているのは間違いないのですが、ヘラクレイトスが先に同一の文を書かなかったかどうかは分からないので、「誤った引用だと思われる」としか今は言えません。

「刹那」と「せつない」はお互い無関係の言葉であるものの、音として耳に入ってくる際には、どうしても連想してしまいます。

お前が刹那から追い出したものを永遠は返してはくれない

は真実なのですが、それはとても「せつない」こと。
時間を無駄にしないよう常に心掛けたいと感じます。