「ヒマタンビール」(朝ドラ『虎に翼』)

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ドラマの小道具に関する短い記事です。マニア向けだと思います。

朝ドラ『虎に翼』第2回の静止画像。ビール瓶に注目します。
朝ドラ『虎に翼』第2回から
ラベル部分を切り取った画像。「~TAN BEER」と書かれているようです。
朝ドラ『虎に翼』第2回から
少し後のシーン。今度はテーブルの上にある瓶を。
朝ドラ『虎に翼』第2回から
こちらは瓶全体を切り取りました。
朝ドラ『虎に翼』第2回から「ヒマタンビール」
「HIMATAN」と記されているように見えます。全体では「HIMATAN BEER」。

これはAKで制作される朝ドラで非常によく使われてきた小道具である「ヒマタン」関連の製品に違いありません。
もう少しハッキリ見える画像を見てみたいところです。

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ラベルの赤い部分にあるはずのイラストが何を表しているのか全然わからないのですが、全体のデザインが激似のビールが実在していました。戦前のヱビスビールです。

漢字の恵比寿やローマ字のYEBISUと書かれていたラベル名が、カタカナのヱビスに変わった。ヱのカタカナも独特です。奈良時代にはエとヱの使い分けもあり、ゑのかなも使われていた。その後、無くなりかけていたが、明治になって公教育で歴史的仮名遣いが採用されて、用いられるようになり、戦後、GHQにより、現代仮名遣いに改められるま...

偶然似てしまうということもないわけではないと思いますが、おそらくこのヱビスビールに似た感じとなるようにデザインされたのだろうと考えます。

そして、ドラマの設定は昭和6年(1931年)ということなので、これまでで最も古い「ヒマタン」製品となります。「ヒマタン」は洗剤などの日用品メーカーだと思い込んでおりましたが、もともと酒造メーカーでそこから大きくなったのかも知れません。
「ヒマタン」は奥が深い…。

(2024年4月4日追記)


追記します。

ヒロイン・寅子(伊藤沙莉さん)と優三(仲野太賀さん)が結婚をした際に身内だけで開かれた祝いの席です(『虎に翼』第35回から)。兄・直道(上川周作さん)と義姉・花江(森田望智さん)の前に見えるビール瓶は、一見、別のビールのように見えます。
朝ドラ『虎に翼』第35回から
朝ドラ『虎に翼』第35回から「ヒマタンビール」
比較する為の静止画像は第16回から(寅子、とっても楽しそう)。
朝ドラ『虎に翼』第16回から
朝ドラ『虎に翼』第16回から「ヒマタンビール」
第35回の画像を再掲します。
朝ドラ『虎に翼』第35回から「ヒマタンビール」
かなり不鮮明ながら、色使いが異なるだけで同一のデザインであることをうかがわせます。昭和16年(1941年)11月ということなので、色を変更したのはやはり戦争の影響でしょう。前年に施行された「七・七禁令」と呼ばれる「奢侈品等製造販売制限規則」の対象品目にビールは入っていませんが、比較的華美であった図案から色を変更して簡素にしたということです。ハッキリ見えないのがツライですが。

(2024年5月18日追記)


追記します。
「ヒマタンビール」(別ラベルバージョン)がかなり大きく映る場面が第38回にありました。猪爪家の食卓です。寅子の兄・直道(上川周作さん)が出征するのを祝う意味を兼ねた食事です。
朝ドラ『虎に翼』第38回から
「ヒマタンビール」の映っている箇所を切り取って明るくしました。
朝ドラ『虎に翼』第38回から瓶入り「ヒマタンビール」
ラベルの中央にあるイラストは、ぶち猫が鳥のような動物を前足で持って立っているような感じです。下には「TRADE MARK」のはず(雰囲気で)。

さらに「LAGER BEER」「ヒマタンビール」(右から左への横書き)と続きますが、その次はおそらく会社名で「●●●麦酒株式會社」(同)と記されているようです(ここも雰囲気で)。

一番外にある文字は、上の「HIMATAN BEER」は合っていて、下の長いのは「BREWERY COMPANY LIMITED TOKYO JAPAN」のはず。「BREWERY」の前にあるはずの文字が見えないので、参考の為にこのページで引用した4枚目の画像を再掲します。
朝ドラ『虎に翼』第2回から「ヒマタンビール」
なんとなく「HIMATAN BREWERY COMPANY LIMITED」のように思えるのですが、どうでしょうか。

そうすると漢字表記の社名「●●●麦酒株式會社」は、「●●●」が「ヒマタン」を表しているのではないかと。
第38回の「ヒマタンビール」画像からラベル部分を切り取ってみます。
朝ドラ『虎に翼』第38回から瓶入り「ヒマタンビール」
「●●●」で「ヒマタン」なら、最後の「タン」に相当するのは「丹」の1文字ではないのかと予想します。
ここからはさらにもう少しよく見える画像がないと先へ進めません。
「早く知りたい」という気持ちと、「まだ知りたくない。楽しみなので、もっと先でいい」という気持ちが半分半分というところでしょうか。判明した際には即追記します(4Kなら一発で?)。

(2024年5月22日追記)


追記です。

土曜日の再放送で4Kで放送された映像を確認しました。
「●●●麦酒株式會社」は「向日丹麦酒株式會社」でした。
朝ドラ『虎に翼』第38回から「ヒマタンビール」ラベル
(BS4Kのテレビ画面をスマホで撮影したものなので粗い画像です。申し訳ありません。)

「向日丹」で「ヒマタン」と読みます。「向日葵ひまわり」由来の漢字表記であろうと思われます。

また、「HIMATAN BREWERY COMPANY LIMITED」に続くのは「TOKYO JAPAN」ではなく「TOKYO,JAPAN」でした。「J」がかなり細い字になっています。

そして、イラストのぶち猫(ヒマタン?)が持っているのは鳥ではなく何かの布(手拭い?)のようです。
「何言っているんだ、これは布ではなく〇〇だよ」等のご意見をいただければ大変ありがたいです。

ラベルにある「BREWERY」の前にあるはずの文字がまだ確認出来ていませんので、引き続き「ヒマタンビール」を注視します。

(2024年5月25日追記)


戦後の闇市にも「ヒマタンビール」はありました。寅子が一人で来た焼鳥の店です。画像は第44回から。朝ドラ『虎に翼』第44回から
朝ドラ『虎に翼』第44回から「ヒマタンビール」
まだ簡素なラベルバージョンですが、そのうちに以前の「ヒマタンビール」が使われるようになるはずです。

(2024年5月30日追記)


「ヒマタンビール」のカレンダーが貼られているのに気づきました。「家庭裁判所設立準備室」の中です(第52回から)。カレンダーは右の方に。
朝ドラ『虎に翼』第52回から
切り取った画像。補正していますが、分かりづらくて申し訳ありません。
朝ドラ『虎に翼』第52回から「ヒマタンビール」カレンダー
猫のイラストが3点ほどあるようです。「ヒマタン」はこの猫の名前なのだと考えてよいのでしょう。

(2024年6月11日追記)


戦前の「ヒマタンビール」が復活しました。画像は第53回から。昭和23年(1953年)です。
朝ドラ『虎に翼』第53回から
朝ドラ『虎に翼』第53回から「ヒマタンビール」
戦中のラベルも決して悪いデザインではなかったのですが、やはりこちらのラベルの方が個人的には好みです。
そして、どのようなイラストなのかがハッキリ分かる画像を熱望しております。

(2024年6月13日追記)


ヒマタンビールのラベルに描かれているイラストのネタ元が判明しました。
浮世絵師・歌川国芳の『そのまま地口猫飼好じぐちみょうかいこう五十三びき』にある「亀山」です。

グッズの画像がアマゾンにありましたので引用させていただきます。

Amazon「セトクラフト 豆皿 ばけあま歌川国芳シリーズ」から引用

戦中に販売されていてた「ヒマタンビール」のラベル画像を再掲。
朝ドラ『虎に翼』第38回から「ヒマタンビール」
見事に合致しています。

「ヒマタンビール」のイラストは歌川国芳の『まま地口猫飼好五十三疋』にある「亀山」(ばけあま)をほぼそのままで使用していたものなのでした。地口絵じぐちえ(格言・ことわざなどを駄洒落にした地口を戯画にしたもの)。「亀山」→ばけあま・化け尼。手拭いを被って尼に化けようとしている様子です。なので、猫が持っているのは手ぬぐいで合っていました。

歌川国芳の無類の猫好きはWikipediaにも記されています。

こうなると、「家庭裁判所設立準備室」に貼られていたカレンダーにあるイラストも歌川国芳の作品なのか、となります。
先に引用した「家庭裁判所設立準備室」にある「ヒマタンビール」のカレンダー画像を再掲。朝ドラ『虎に翼』第52回から「ヒマタンビール」カレンダー
不鮮明な画像から判断するのですが、答えは簡単でした。
左上は「藤澤」(ブチサバ)、右上は「藤川」(ブチカゴ)、下は「大磯」(オモイゾ)なのでした。「大磯」の赤いフニャフニャしているのは大きなイカ。

「ヒマタンビール」のラベルにあるイラストまではなんとか自力でたどり着いたというところですが、カレンダーの絵は全く知識がなく無理でした。
参考にさせていただいたサイトです(↓)。ありがとうございました。

浮世絵界きっての愛猫家として知られる絵師・歌川国芳。日本橋から京都まで、東海道の宿駅の名前をもじった、猫の東海道を描いているのをご存知でしょうか? その名も「其まま地口 猫飼好五十三疋(みゃうかいこうごじゅうさんびき)」。「地口」とは語呂合わせのこと。国芳が50歳頃に描いた作品です。今日の我々には、あまりピンとこない洒...
浮世絵界きっての愛猫家として知られる絵師・歌川国芳。東海道の宿場を猫のダジャレで表現した「其まま地口 猫飼好五十三疋(みゃうかいこうごじゅうさんびき)」をご紹介。同世代の絵師・歌川広重の「東海道五拾三次(保永堂版)」と合わせて、猫の東海道の旅をお楽しみください。後編は見附からスタートです。(前編はこちらから) 歌川...

ドラマももう終盤なので、戦後に再度登場した「ヒマタンビール」の画像を並べてみます(全部ではありませんので念の為)。

家庭裁判所の独立庁舎完成記念パーティー(第61回↓)。
朝ドラ『虎に翼』第61回から

新潟時代の麻雀大会(第85回↓)。
朝ドラ『虎に翼』第85回から

寅子と航一(岡田将生さん)の結婚式の後に、同じ「竹もと」で開かれた明律大学の同窓会(第105回↓)。
朝ドラ『虎に翼』第105回から

昭和44(1969)年の星家のお正月(第116回↓)。女性は航一の長女・のどか(尾碕真花さん)。
朝ドラ『虎に翼』第116回から

「ヒマタンビール」のラベルに描かれている猫の元ネタが判明し、カレンダーの絵も同様だったことが分かりましたが、「ヒマタンビール」そのものの鮮明なラベル画像をやはり見たいものです。

(2024年9月9日追記)


本日放送の第129回で、戦前からある「ヒマタンビール」が大きく映る場面がありました。寅子の横浜家裁所長就任祝いの食卓です。
朝ドラ『虎に翼』第129回から
切り取って補正した画像。
朝ドラ『虎に翼』第129回から
「おお、やはりこうなっていたのだ!」と、予想通りといえばそうなのですが、最終回の直前にずっと見たかった「ヒマタンビール」のラベルを見ることが出来て実にウレシイです。

文字を書き出してみます。

一番外側に「HIMATAN BEER」「HIMATAN BREWERY COMPANY LIMITED TOKYO,JAPAN」。

「TRADE MARK」の文字を含んだ「ヒマタンビール」のロゴが中央にきて、その下に「LAGER BEER」「ヒマタンビール」「向日丹麦酒株式會社」とあります。

文字内容で、戦中のラベルと異なる点があるのにお気づきでしょうか。戦中のラベル画像を再々掲します。
朝ドラ『虎に翼』第38回から「ヒマタンビール」ラベル

「ヒマタンビール」「向日丹麦酒株式會社」が、戦中のは右から左に、そして第129回で映っていたビールのラベルでは左から右に書かれているのでした。
ドラマの最初の方に映っていた「ヒマタンビール」がどうなっていたのか少しだけ気になりますが、ラベルがしっかり見える画像がないので確認のしようがありません。ただ、おそらく「ヒマタンビール」のラベルは、通常バージョンと戦中の「簡素バージョン」の2種類だけだったのだろうと思います。

Xでひぞっこさんが「ヒマタンビール」について書いたこのページを紹介してくださいました。投稿を引用させていただきます。


「ヒマタンビール」は「向日丹ヒマタン麦酒ビール株式會社」が製造販売するビール。『虎に翼』をよく視聴されている方でもこの架空のビールをご存じの人はほとんどいらっしゃらないのかと思うと少々残念な気持ちになったりします。
それでも、それだからこそ、「ヒマタンビール」を細かい部分までチェックしようとしてきた、変わり者の視聴者もいるということを制作に携わった方にお伝えしたいのです。
素敵な名前と美しいデザインのビールをありがとうございました。

(2024年9月26日追記)