ドラマの小道具として使用される張り紙に関する、マニア向けの濃い記事です。
昨日書いた【難和電鐵 杉川町驛】では、『カムカムエヴリバディ』で使われた大阪市内にあるという設定である駅舎のロケ地を取り上げました。今回は「杉川町驛」そのものではなく、駅舎に貼られた張り紙について書きます。
「難和電鐵 杉川町驛」の駅舎です(『カムカムエヴリバディ』第8回から)。出入口の右の壁に何枚か張り紙が張られています。
切り取りました。張り紙らしきものは5枚です。
説明する為に番号を振ります。
この中で、②③④については、過去に記事にしておりました。いずれも以前朝ドラで使用された実績があります。ここではそれぞれ1ヶ所だけのご紹介ですが、詳しくはリンク先のページをご覧ください。
②「熟練工急募/岸田金型工場」
『スカーレット』第77回から。ヒロイン喜美子(戸田恵梨香さん)が住み込みで働いている「荒木荘」のすぐそばです。
「熟練工急募/高級優遇二名/岸田金型工場」と書いてあります。「高級優遇」は、本来「高給優遇」でしょう。2つある「工」の字の太さが、共に極端過ぎてインパクトがあります。好きな張り紙。
③「女給募集/サロン 巫女福」
『おちょやん』第107回から。場所は京都市内。「七条南郵便局」のそばです。張り紙は右下にあります。
切り取って補正した画像。
実は、本当に「巫女福」なのかどうか、今でも少し自信がありません。「巫」は違っているかも。
④の「急募 配管工/田中パイプ工業所」については、同じ『カムカムエヴリバディ』第8回の静止画像が最もよく映っているので、先にそれを引用します。
③「女給募集/サロン 巫女福」で引用した『おちょやん』第107回と同じ画像です。「急募 配管工/田中パイプ工業所」の張り紙は、「巫女福」の左上。
少し汚れている箇所も含めて、見事に同じ張り紙です。
ここまで、簡単に②~④の張り紙についてご説明しました。
番号を振った画像を再掲。
②③④の張り紙が、過去の朝ドラで使われたことがお分かりいただけたはずです。
そして、初めて見たような気がする①ですが、これは張り紙ではなく、ホーロー製の看板です。
看板画像を切り取りました。
内容を記します。
國(国)を守る丈夫な
子供を育てませう(しょう)
●入院設備あり●往診應(応)ず
赤木小児病院 コノ先
住所等が記されておらず、そしていかにも戦前あるいは戦中の書き方で、朝ドラではよく使われてきたのではないのかと思われる看板ですが、私は初めて見たような気がしています。引き続き調べるのですが、今回が実は初登場ということも可能性としてはあり、再び他の朝ドラで出て来た時に触れるだけになるかも知れません。
また、⑤の張り紙は、これではほとんど判読出来ません。
ただ、②~④の張り紙が、それぞれ人材募集のそれなので、同様の張り紙なのかなと考えますと、3行あるうちの1番下は「出勤可能〇〇」と読めそうです。
実は、先に③「女給募集/サロン 巫女福」と④「急募 配管工/田中パイプ工業所」で引用した『おちょやん』第107回の画像で、張り紙の左半分程度が見えていました。右端にある張り紙がそうです。
切り取りました。
『カムカムエヴリバディ』の杉川町駅張り紙を再掲します。
見比べてみると、1行目は「黄金〇〇」で、次は「週3~」だと。
そして3行目はやはり「出勤可能〇〇」。
1行目は「黄金食品」なのかも知れません。
以上が『カムカムエヴリバディ』で使われた「杉川町驛」駅舎出入口の向かって右の壁に貼られた張り紙と看板についての簡単な考察でした(画像を再々掲)。
これらとは別に、出入口の左にあるこの看板は、おそらくご存知の方も多いのだと思います。大阪制作の朝ドラでは常連の「中嶋質舗」看板です。
過去には、
- 『ごちそうさん』(大阪市)
- 『マッサン』(大阪市・主人公らの自宅近く)
- 『べっぴんさん』(神戸市)
- 『まんぷく』(大阪池田・織田島製作所のそば)
- 『スカーレット』(信楽)
- 『おちょやん』(京都市・京極南郵便局のそば)
で使われてきたのを確認しています(他にもありそう)。
まだあります。駅舎の中の、この張り紙も気になるところ。
張り紙には、「安全」「安全を母も家にて神だのみ」と書いてあります。
これは、ピースあいちさんが紹介している【厚生省推薦・大日本産業報国会指導-のポスター】のページにありました(PDFの82ページ)。やはり戦時中に使われていたものです。『カムカムエヴリバディ』で使われたポスターが、当時実際に流通していたものなのか、あるいは戦後復刻したものなのかは不明ですが。
「安全を母も家にて神だのみ」ポスターについて追記します(2021年11月23日)。
『カーネーション』でとても似たポスターを見つけました。奥に見える「市吉商店」に張られています。
極めて不鮮明な画像で大変恐縮です。切り取って明るくしましたが、内容はほとんど分からないのです。
ただ、図案がソックリに見えるので、左右のいずれかが「安全を母も家にて神だのみ」ポスターで、もう片方が【厚生省推薦・大日本産業報国会指導-のポスター】でこれと対になっている「命惜しむ気で時を惜しめ」なのかも知れません。「杉川町驛」の画像を再掲しておきます。
イライラする方がいらっしゃったらごめんなさい。
追記します。
⑤の張り紙は、「黄金食品」ではなく「黄金仮面」でした。画像は『おちょやん』第104回から。場所は第107回と同じなのですが、夜なので暗い画像です。
明るくしました。
張り紙に書かれていたのは、「黄金仮面/週3~/出勤可能募集」なのでした。「黄金仮面」というのがどのような形態の店(?)なのかが、とても気になります。また、『おちょやん』のこの場所から、3枚の張り紙が仲良く(?)揃って『カムカムエヴリバディ』の世界へやって来たので、この点も少しだけ興味深いです。
夜になり、安子が岡山へ帰るのに利用したのも杉川町駅でした。再度、駅舎入口右の壁にご注目ください。
暗いので明るくしています。
昼間はあった⑤「黄金仮面」の張り紙がなくなっています。この間に、「黄金仮面」としては採用が決まる等の理由で募集する必要がなくなったのだと捉えるべきでしょう。時間が経過していることを張り紙の有無でも表現しているわけです。
ちなみに、駅舎の上にある「福助ビール」の看板は初見です。当然、「難和電鐵 杉川町驛」の看板も。
いずれも大きくて、W3600×H900くらいかなと思われます。
朝ドラでは「福助ビール」そのものも記憶にないのですが、これから「福助ビール」が大阪に進出してくるのかも知れません。
また、大阪制作の朝ドラでは頻繁に使われる「ナニワ石鹸」の看板もちらっと顔を覗かせています。
以上、『カムカムエヴリバディ』第8回に映っていた「難和電鐵 杉川町驛」の駅舎とその付近にある看板について書きました。
(2021年11月12日追記)
戦後の杉川町駅の駅舎がちらっと映っている場面が第25回にありました。
看板を切り取りますが、カメラの動きが早くてこれが限界です。
赤い部分に白い組文字で「難和電鉄」、青い部分には同じく白で「杉川町駅」と書いてあるようです。「難和電鉄」はほとんど勘ですが。
上の「福助ビール」看板はそのままでした。
(2021年12月3日追記)
追記です。
「福助ビール」看板は、『おちょやん』に登場していました。番宣番組「もうすぐ!連続テレビ小説『おちょやん』」から。
「福助ビール」看板は右上にありますが、文字で隠れてしまっていました。
(2021年12月7日追記)